エリート上司の甘く危険な独占欲
「一之瀬部長……」
「名前で呼べって言ったのに」

 颯真が言いながら、華奈の髪に手櫛を通した。その手が華奈の耳たぶに触れ、首筋へとゆっくりと降りていく。華奈の柔らかな素肌に彼の逞しい体が覆い被さっていて、彼と一夜を過ごしたことを瞬時に思い出した。

「今日が土曜日でよかったな」

 颯真がつぶやいて顔を左側に向けた。その視線を追うと、サイドボードに置かれた時計が九時半を指しているのが見えた。

「あ、ホント……」

 華奈はほうっと息を吐いた。

「夢の中でも佐脇に苦しめられたのか?」

 心配そうな、でもどこか不満の混じった表情で颯真が言った。

「いいえ。課長じゃなくて……大学時代の夢を見ていました」
「いずれにしろ、楽しい夢じゃなかったようだね」
「そうですね」

 華奈はため息をついて顔を横に向けた。

「嫌な夢なら俺が聞いてやるよ。吐き出してすっきりすればいい」
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