エリート上司の甘く危険な独占欲
第四章 問題だらけの月曜日
 週が明けた月曜日。華奈は憂鬱な気持ちで電車を降り、フィーカの本社が入るビルに向かった。林立するオフィスビルの間に、ガラス張りの近代的なビルが見えてきて、華奈の足取りが重くなる。

 ほかのフロアに入る企業の社員らしき人たちと一緒に自動ドアからエントランスに入ったとき、エレベーターを待つ人の中に、ネイビーのスーツを着た柊一郎の後ろ姿を見つけた。

(わ……)

 華奈は歩調を緩め、壁に飾られた絵画にさりげなく近づいた。そのとき、後ろから明るい声が飛んでくる。

「あ、華奈さん! おはようございま~すっ」

 振り返ると、同じ貿易管理部の二年後輩である相原(あいはら)麻衣(まい)がいた。第三者がいる場面ではちゃんと“川村主任”と呼ぶが、普段は“華奈さん”と呼んで懐いてくれているかわいい後輩だ。

「あ、麻衣ちゃん、おはよう」
「エレベーター、来ましたよ」

 麻衣が二基あるエレベーターの右側を示した。

「あ、う、うん、そうだね」

 麻衣に腕を引っ張られ、華奈は仕方なく歩き出した。麻衣が柊一郎に気づいて声を上げる。

「あ、佐脇課長! おはようございま~す!」
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