エリート上司の甘く危険な独占欲
「……ですか？」
「え？」
「もぅ、華奈さんったらぼんやりしちゃって。彼氏のことでも考えてたんですね～？」
「え、まさか」

　華奈は慌てて話題を戻す。

「それより、さっきはなんて言ったの？」
「えーと、さっきはですね、華奈さんは彼氏と一緒に買い物に行ったりしないんですかって訊いたんです」
「あー……」

　華奈は視線をそらした。

『同じ部署の上司と部下という関係だから、付き合っていることは内緒にしよう』

　そう柊一郎に言われたので、彼との関係はみんなには秘密だった。だが、同期や後輩には話の流れから、『彼氏がいる』ということだけは伝えていた。

　とはいえ、同じエレベーター内に柊一郎がいて、きっと彼にもこの会話は聞こえているはずだ。麻衣にどう答えようかと迷っているうちに、エレベーターは八階に到着した。

　柊一郎が先に降り、華奈と麻衣が続く。

「私、ドリンク買ってきます～」

　麻衣が言って、自動販売機コーナーに向かった。残された華奈が気まずい思いで歩き出そうとしたとき、柊一郎が華奈にだけ聞こえるような低い声で言った。
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