エリート上司の甘く危険な独占欲
 気づかないうちにランチタイムになっていたらしく、華奈は麻衣に「華奈さん、ランチに行きましょう」と誘われて、パソコンから顔を上げた。壁の時計を見ると、針は十二時七分を指している。

「お腹空きましたね~」

 麻衣の言葉に、華奈は曖昧な声を返す。

「あー……」

 正直言って、ぜんぜんお腹が空いていない。

(遅めに行って、サラダでも食べよう)

 そう考えて麻衣に言う。

「やらなくちゃいけないことがあるから、先に行っててくれる?」
「わかりました~。いつもの隣のビルのカフェに行ってますね!」
「うん。あ、それから、私が来なくても気にしないで先に食べててね」
「あ、はい」

 麻衣は返事をして、ほかの女性社員とともに財布を持ってオフィスを出ていった。華奈はふうっと息を吐いてパソコンのモニタに視線を戻す。目の端で課長席をうかがったが、柊一郎の姿はなかった。もうすでに昼食に出ているようだ。
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