エリート上司の甘く危険な独占欲
「華奈さん、私からもあーん」

 斜め前の席から、麻衣の同期の中出(なかで)梨香子(りかこ)にカレーライスをすくったスプーンを差し出され、さすがに苦笑した。

「私、ホントに大丈夫だから。みんなありがとうね」

 華奈はフォークを手に取った。麻衣は最後のサンドイッチを食べ終えて、颯真にねだるように言う。

「部長、デザート頼んでもいいですかぁ?」
「いいよ、もちろん。川村主任の分も頼んであげて」

 茹でたブロッコリーを口に入れた直後だった華奈は、手で口元を押さえて慌てて言う。

「へ、はるひからひひって」

 え、悪いからいいって、と言ったつもりだったが、当然誰にも伝わっていない。麻衣がプッと噴き出し、颯真がおかしそうに笑い声を立てた。



 結局華奈は麻衣が華奈のために選んだカスタードプリンも食べて、カフェを出た。梓と梨香子に挟まれて前を歩く颯真を見ながら、華奈と麻衣は並んでオフィスに戻る。前の三人が自動ドアから中に入ったところで、麻衣が足を止めた。

「どうしたの?」

 華奈は振り返って麻衣を見た。麻衣は立ち止まったまま、華奈を見て言う。
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