エリート上司の甘く危険な独占欲
 華奈はつぶやきながら、なにか策はないかと考えを巡らせた。保管料のかかる倉庫に長く留めておけないとなれば、店舗の倉庫に置いてもらうしかない。

「各店舗に少しずつ在庫を増やしてもらいませんか?」
「各店舗に少しずつ在庫を増やしてもらおう」

 華奈と颯真が同時に言い、二人は自然に互いの顔を見た。

「その対応は可能かね?」

 青柳の言葉に、颯真は華奈から貿易管理部部長へと視線を動かす。

「はい。総合販売部が各店舗と交渉し、責任を持って対応します」
「ありがとう、頼む」

 青柳の言葉に、颯真は「はい」と返事をした。そうして華奈に声をかける。

「キャンセルの件、対応をお願いするよ。キミに任せておけば大丈夫だね」
「はい」

 華奈はしっかりとうなずいた。颯真は今度は麻衣に向き直る。

「保管の件は俺がどうにかする。キミには川村主任がついているから大丈夫だ。そう落ち込むな」

 そう言って麻衣の肩をポンと叩いてからオフィスを出ていった。華奈はキャスター付きの椅子を、座ったまま転がして麻衣に並ぶ。
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