エリート上司の甘く危険な独占欲
「先月、発注量が増えてるから、メーカーによっては右肩上がりの発注を期待している可能性も考えられるの。だから、翌月の発注がキャンセルになったって知ったら、がっかりするか気を悪くすることもあるから……そういうときにできるだけ角の立たないようなレターを作成したいじゃない？」

　麻衣が神妙な顔で「はい」と返事をした。

「国や文化、もっと言えばメーカーによって考え方が大きく違うこともあるから、過去の事例ややりとりの経験から、参考になるフォーマットを少しずつまとめたものがあるの」

　華奈は麻衣のパソコンを操作して、貿易管理部の共有フォルダを表示させた。いくつかフォルダをクリックして、目当てのフォルダを探し出す。

「えーっと、あった、これだ」

　華奈はフォルダの中にある複数のファイルの中から、一つを選んで開いた。

「これがフォーマットだから、これを参考にしてレターを作成してね」
「はい。あの、できあがったレターのチェックをお願いしてもいいですか？」

　麻衣が不安そうに言った。

「もちろん」
「ありがとうございます」

　華奈は麻衣に安心させるようにうなずいてから、自分の席に戻った。




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