エリート上司の甘く危険な独占欲
 その艶やかなベルベットの箱を見て、華奈は息を呑んだ。

「付き合って半年になるしな。もうそろそろいいかと思ったんだ」
(こ、これってプロポーズ!?)

 柊一郎の言葉を聞いて、華奈は嬉しさのあまり大きな声を上げそうになるのを、ぐっとこらえた。

「あ、ありがとう」

 華奈ははにかみながら、小箱に手を伸ばした。柔らかな生地が指先に触れて、喜びに手が震えそうになる。

 右側に座っている柊一郎にチラリと視線を向けると、彼は開けていいよ、と言うように小さくうなずいた。有名大学を卒業してフィーカに入社した彼は、三十歳で貿易管理部の課長を務めるエリートだ。縁の細いメガネをかけていて、少し神経質そうにも見えるが、それは彼が丁寧に仕事を進めるからこそ。

 華奈から連絡しなければ、彼からメールやメッセージが来ないのが玉に瑕だけど、仕事のできる忙しい男性なら、それも仕方ないだろう。それ以外は結婚相手として申し分ない。

 仕事にやりがいを感じているし、一週間前に主任に昇進したばかりだ。人生はまさに順風満帆、これぞリア充というものだろう。
< 7 / 161 >

この作品をシェア

pagetop