エリート上司の甘く危険な独占欲
「おまえが二十六歳で主任になるなんておかしいと思ってたんだよ。おまえの昇進の話を聞いたときは、不覚にも動揺した。それが件の確認ミスにつながったんだろうな。なにしろこの俺でさえ、主任に昇進したのは二十八のときだったんだから。まあ、三十一歳で課長というのも異例の速さだが。その俺をおまえが抜くなんて、青柳部長か人事部長辺りに体でも差し出したか」

 柊一郎の言葉に、華奈は驚くよりも呆れてしまった。

「いったいどうしてそういう発想になるんです? そんなデタラメをあなたが言っていたって、青柳部長や人事部長が知ったらお怒りになると思いますけど」

 柊一郎は「ふん」と鼻を鳴らした。

「たとえそうじゃなかったとしても、おまえの出世はおまえの能力や実績が評価されたわけじゃないんだ。思い上がるな」
「どういう意味です?」
「うちの会社は、女性管理職の割合を引き上げようという政府の取り組みにいち早く賛同して、女性が活躍しやすい職場作りに努めている。そして実際に女性管理職の割合を引き上げるために、適当な人材を探して、たまたま華奈になったってだけの話だ。企業ホームページに載せるのに、おまえなら写真写りもいいしな。こんなに若い女性が出世してるっていうのは、最高のイメージアップになる」
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