エリート上司の甘く危険な独占欲
「部長も来てたんですか」

『よく行く』とは聞いていたが、今日もいるとは。

「意外だな。この店にはもう来ないだろうと思ってたけど」

 柊一郎に振られて泣いた記憶のあるバーだから、そう思ったのだろう。華奈はおずおずと隣のスツールに腰を下ろした。

 自分でもどうしてここに来たのかはわからない。だけど、来たいと思ったのは本当だ。

「嫌なことがあった?」

 華奈は迷いながら、ゆっくりとうなずいた。

「よかったら話を聞くよ。まあ、話したくなければ無理にとは言わない。いまだに電話の一本もくれないくらいだからね」

 最後は少しいたずらっぽい口調だった。

(いったい何人の女性にこんなふうに言ってるんだろう)

 でも、だからこそ彼には話しやすいのかもしれない。華奈はバーテンダーにミモザを注文してから、颯真を見た。彼は気遣うように華奈を見つめている。

「私が……主任になれたのって、若い女性だからなんですよね」

 颯真はわずかに眉を寄せたが、話の続きを促すように小さく首を傾げた。
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