エリート上司の甘く危険な独占欲
第七章 遠ざかる距離
「こうやってフライパンを軽く揺すりながら……」

 颯真が器用にフライパンを動かして、オムレツの形をふんわりと整えた。

「どうしてこんなにキレイな形になるんだろう……」

 華奈は眉を寄せながら、颯真が皿に盛りつけるのを見つめた。まくったシャツの袖から男性らしい筋肉質な腕が見える。

 颯真はフライパンをガスコンロに戻して笑った。

「一人暮らし歴は十八のときからだから、さすがに慣れるよ」
「私も就職してから自炊してますけど、オムレツってあまり作らないです。スクランブルエッグの方が簡単だから、そうしちゃうかな」
「オムレツは具を好きにアレンジできるから、栄養面でもいいよ」

 そういう今日のオムレツには、トマトとチーズとツナが入っている。

 颯真が茹でたブロッコリーとトーストを添えて、カウンターに大皿を置いた。華奈はコーヒーサーバーのコーヒーをカップに注いで並べた。

 颯真と並んでスツールに座り、華奈は手を合わせて「いただきます」と言った。トマト入りのオムレツは初めてだったが、火を通したトマトは酸味がまろやかになっていて、チーズともツナとも好相性だ。
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