エリート上司の甘く危険な独占欲
 颯真は黙ったまま華奈を見ている。

「だけど、だからといって殻に閉じこもってしまうのは、負けているみたいで悔しくて。周りの人にできることなら、私にだってできるはず。大丈夫だから胸を張ろう。そんなふうに自分を励ますための言葉なんです」
「そうだったんだね」

 颯真がナイフを置き、右手を伸ばして華奈の頬にそっと触れた。愛おしむように頬を撫で、そのまま顎へと滑らせる。まつげを伏せた彼の顔が迫ってきて、華奈は小さく息をのんだ。

「あの、食べないと会社に――」

 ぺろり、と口角を舐められ、「遅れます」という言葉は喉の奥に引っ込んだ。

「卵がついてた」

 華奈の顔が一気に熱くなる。

「本当は唇だけじゃなくて華奈を丸ごと食べたいけど、さすがに時間がないし、我慢するよ」

 颯真が親指を舐めながら華奈にチラリと視線を送った。その仕草にドキッとして、華奈は手に持っていたコーヒーカップをあやうく落としそうになった。




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