エリート上司の甘く危険な独占欲
 この状況で別れを切り出される意味がまったくわからない。戸惑いと焦りに突き動かされ、華奈は柊一郎のスーツの左手に右手を伸ばした。そのとたん、柊一郎がさっと左手を引っ込めた。

「華奈は付き合うには最高の女だと思う。美人だしスタイルもいいし、俺の話をすごく興味を持って聞いてくれるしな」

 柊一郎の表情も口調も冷たい。

「だけど、結婚相手には向いていない」
「な、ど、どうして」

 柊一郎は一六八センチある華奈の全身をさっと見た。今着ているオフホワイトのタイトワンピースは、艶のあるハニーブラウンの髪によく映えるので、華奈はとても気に入っていた。

 だが、柊一郎はそうではないらしい。

「派手すぎるんだよ」

 彼は嫌悪感もあらわにつぶやいた。

「え?」
「それに、付き合っていることは秘密にしようって俺が言ったからって、男と二人きりで飲みに行くような女を妻になんかできない。信用できない」
「ちょっと待って、私、そんなことしてない!」

 まったく身に覚えがないことを言われて、華奈の声が高くなった。
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