口づけは秘蜜の味

真横から見た神上さんの完璧とも言える
顔の輪郭に……心臓が飛び出しそうだ

(睫毛長い!鼻から顎にかけてが彫刻みたい!)

若干…美術品の鑑賞のようになってじっと見詰めていると

「なぁ坂下……その…そろそろ前を向かないか?」

と、神上さんが呟いた

「え?」

「そんなに熱心に見られると…オレに穴があくぞきっと……」

いつもより少しだけ砕けた口調

指をトントンとハンドルを叩いているし

その表情がちょっとだけ照れ臭そうに見えたのは

夜のライトのせいだけではないはずだ…

「す、すみません……」

なんだか少しだけ神上さんが可愛らしく感じられたのも束の間

「いや…坂下がそんな風にするのが予想外だった」

「え?」

「オレに興味がなさそうだったからね…」

確かに見た目は素敵だと思っていたけれど
恥ずかしすぎて
あからさまに見たり、近づいたりなんて出来なくて

仕事中もなるべく必要以外は近づいていなかった気がする……

冷静に部下のそんな所も見られていたのか…
なんて改めて恥ずかしくなってしまう

「送るけど……坂下食事は済んでるか?オレは定時で飛び出したから実はまだなんだ…」

「お腹空いてないので…あの、大丈夫です」

なんて言ってたのに

さらに恥ずかしいことに
私のお腹が盛大に鳴り出して…

「ハハハ…その割には良い音だ……身体は正直ってことかな……遠慮しなくてもいいのに
では、食事でも行こう?それとも上司とじゃあ、いやか?」

「いえ…嬉しいです…」

恥ずかしいけれどもう隠しても仕方ない

確かにお腹は空いていたし


そしてそのまま車は私の家ではなくて
神上さんの家に回され……

そこから食事に連れて行ってくれた






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