口づけは秘蜜の味
「そうか?」

「はい、すぐ近くです…びっくりしました」

神上さんの住むマンションだと言われてついたのは私の家からすぐに歩いてこられるエリアでびっくりした

「ではお酒が少々入っても大丈夫…だな」

と言われ……緊張を解すにはお酒かなぁ…

なんて神上さんおすすめのお店で飲み始めてしまったのが
イケなかった…

「神上部長はなぜ笑わないんですか?」

「は?」

「笑顔を見たことありません…その逆も…」

緊張していた筈なのに…
お酒も入り、ほろ酔いで何だか気分が良くて
ついつい気になっていた事を聞いてしまった…

「会社で笑うような事や怒りを爆発させる事が起こらないから……じゃないか?」

ただでさえ顔の作りがひんやりクールなので
表情を動かさないと本当に人形のようだ

「見てみたい…気がします…」

きっと婚約者にはそんな一面も見せるんだろうなんて
嫉妬もあったのかもしれない


私の言葉に神上さんはフッと小さく息を吐き出した

笑うというには少し遠いけれど
それが今は……少しだけ緩んでいるように見える

しかもビールをあおりながら

「坂下は……怒っているところを見たことないぞ?いつもニコニコしてる…」

なんて艷やかな瞳でこちらをみつめてきた

「そ、それは……」

(単純だって言いたいんですよね?)

「単純とは思わない、ただ不思議なだけだ」

なんで思ってることが分かったんだろう

「素直だからじゃないか?」

また読まれた…

なんて思って見上げると…
向かい合って座る神上さんの瞳と視線がぶつかって

トクンと胸が音を立てる

「素直だから、ついつい反応が見たくなる…」

「え」

その声に自覚したくない気持ちが湧き上がる

星のようにキラキラとしている黒い瞳に吸い寄せられそうになっていると

神上さんが唇を綺麗に片側だけ引き上げた

そして次の瞬間…
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