口づけは秘蜜の味
「は、はい」

声は……まさかの響くバリトンの神上さんだった

『そうか、こちらは打ち合わせが終わってそのまま出た…駐車場に来てもらえるか?』

「はい…では…降りますね」

神上さんはもう上がっているらしい

『ああ、待ってるよ』

ま、待ってるよ……

本当に行くつもりなのか?

その声の甘さに心臓が跳ねる
スマートフォンの通話を切ってからため息を1つ落とす

嬉しくないわけではない
ただ、複雑なのだ



駐車場に向かうと先日乗せてもらったものとは違う車に神上さんが居た

「こっちだ…」

「昨日のは弟のを借りててね…」

「そうだったんですね…」

昨日は高級そうな…いや、実際ハイグレードなセダンだったけれど今日、神上さんが乗っているのは同じ高級車でもSUV車、車体が少し高くて乗ると長めが良い

あまりイメージじゃないななんて思っていると

実は山に登ったりもするんだよ、と教えてくれた

「で、今日は少し時間も早いし…ちょっと付き合ってほしいんだが……どうだ?」

「だ、大丈夫です…」

連れて行ってくれたのは海のそばのレストラン

駐車場から少し歩くと潮風が心地よかった

「ここのステーキが美味しいんだ…」

「わ!お肉好きです!」

「良かった…昨日の様子だと食べそうだなと思ってね」

女性にはイタリアンとかの方が良いのかと思ったけど坂下は食べるからなぁと

言われてしまった

(昨日、遠慮なく食べたからなぁ……)

結果……ものすごく美味しいステーキを口いっぱいに入れて堪能してしまった……

あぁ……













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