口づけは秘蜜の味
……その後は会社では普通に接していた
あの甘い口づけはまるで夢だったかのように

いつも通りの神上さん…

「坂下、次回の会議までに過去の企画の問題点を纏めた物を提出してくれ…独自でリサーチしていただろう?」

「はい!…すぐにまとめます!」

「頼んだぞ」

何故知っていたんだろう……

新しい企画を考えるのに
まずは…と、前に出してあまり売れなかったものや、利益が出なかったものを調べようと

同期の営業担当から、アンケートを任意で回答して貰っていた

「へぇ神上部長…坂下チーフをよく見てるんですね!」

「私だけじゃなくて、しっかりみんなを見てるわよあの人は…」

後輩が隣の席で感心したように話すのでそう答えた

「僕も色々頑張ろうかな」

「うん、頑張ろう!きっと何かに繋がるよ!」

こうやって上司が頑張りを見てもらえると言うのが伝わると後輩にもいい影響だ


いつも無表情で何を考えているか読めない神上さん
……でもその心の内は結構優しい人なんだと思ってきた





昼休み……お弁当を持参して屋上へ行った

外出する人が多く、あまり人も来ないので気に入っている

給水塔の横の僅かなスペースは腰掛けることも出来るし、上がってきた階段からも見えず…何となく一人になれて好きだった

その日は雨ではないがあまり天気も良くないからか
屋上には人影もなかった

膝の上でお弁当を広げているとバタンっと扉が開く音がする


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