口づけは秘蜜の味
すぐに前を向いてお弁当を食べるのを再開し
なるべく神上さんを見ないようにしていると

横目に見える神上さんは丁寧に頭を下げてから食べ始めていた

「旨い…」

「お口に合って良かったです…良かったらこちらもどうぞ」

「有難う」

最初は梅干しおにぎり、もう1つは昆布のおにぎり
2つを神上さんに渡した

時間もなく、その後は二人とも無言で食べ終え…
私は先に立ち上がる

「では、私準備に行きますね…」

「有難う…頼むよ」

唇をきれいに引き上げた
うっすら微笑むその表情がとても優しげで…
さらには私の頭をポンポンと優しく叩いたりなんてして

いつもの冷たい彼と違うこの甘さに
やっぱりドキドキしてしまう

「はい…」




それから2日後もお弁当を作ってきたので
ゆっくりしようと屋上で食べていた

するとそこへ……

「今日はいた」

「え?お疲れ様です神上部長…」

神上さんが何やら紙袋を手に先日と同じ場所にやってきた

「隣…いいか?」

「はい…あの?」

なぜここに来たのかわからずに首を傾げると
神上さんが私のお弁当の包を持ち上げた

「これ、交換しないか?」

「え?」

持ち上げたのは近くのベーカリーのランチボックス

美味しいけれど、あまり数がないのですぐに売り切れてしまうモノだ

「私のお弁当…あの…残り物詰めただけなんですが…」

「おにぎりが思いの外美味しかったから…だめか?」

無表情なのに
なんだか子どもみたいに期待した目が……可愛らしいと思ってしまった

「はい、じゃあ……お言葉に甘えて!それ美味しいって聞いてて!嬉しいです!」





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