口づけは秘蜜の味
近くの土曜日もやっているそば処で
二人で並んでそばを啜る

疲れた身体にさっぱりとして美味しかった

「じゃあ行くか…」

と、帰ろうと駅に向かって歩き出すと


駅に向かう道で一歩引いて後ろを歩いていたら…

…突然神上さんが走り出した

よく見れば数十メートル先の駅の付近にあの夜の長い黒髪の女性がいて…

そこへ走り寄って行ったのだ

何やら肩に手を掛けて話しかけている…親密そうな様子

そして…

「だから、貴方はサイテー!」

叫び声が響き女性が何かを投げつけて改札の中へ去る

「おい…待てって…!」

呆然とそれを見ているたけれど
神上さんがその場に蹲ったので……
私は駆け寄った

…婚約者とのいざこざに巻き込まれても…
私はどうしたらいいのだろう

だけど…とりあえず…

「大丈夫ですか?神上部長…」

当たったものは鍵らしくて手に握りしめていた

「もう…わかんねー」

呟きが耳に届く

いつもと違うくだけた口調に驚いていると

気づけば私は

(え?)

神上部長に抱き締められていて

「舞花…」

呼ばれた甘い声に思わず

「はい……」

と答えたが

神上さんの気持ちが分からなくて胸が痛い
< 29 / 49 >

この作品をシェア

pagetop