口づけは秘蜜の味
不安で神上さんをもう一度見上げると

びっくりするほど神上さんが優しく微笑んだ

「神上部長でも…」

「ここ会社外だから…そろそろ名前で呼ばないか?」

「ま、ま、雅哉さん…でも…」

(ねぇ、私の手でいいの?)

「舞花………オレはお前と居たい…分かるか?
オレはキミと一緒に居たいんだ」

優しく甘く名前を呼ばないで欲しいのに…切なくなるから

(都合のイイ女……だよ、これじゃあ)  

そう思いながらも
真っ直ぐ見詰めあい…その優しい目に負けてしまう

都合のイイ女…それでもいいからなんて思い始めて手を握り返す

結局そのまま…

近くのショッピングモールに二人で行きあれやこれや見ながらカフェでパンケーキなんてものを食べたり

(これって……完全にデートなのでは?)

夕食まで行くと言われ一緒に付いてきてしまった…

「そうだ、舞花…これ…」

「…なんですか?あ、これ!」

食後の紅茶を飲んでいると
差し出されたのは白い小さな花が飾られたバレッタで

先ほど回っている時に鈴蘭だねなんて話していたモノだった

「さっき…似合いそうだなって思ったから…今日の御礼だ…」

そんな風にはにかむように微笑んで差し出す姿は
冷たいいつもの無表情じゃなくて…キラキラの王子様だった
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