口づけは秘蜜の味
それでもいいから
「こんな素敵なもの…頂けません」

(嬉しいけど切なくなるから…)

「どうしてだ?」

神上さんは少し不機嫌そうに低い声で聞いた

こんなふうに感情を表してくれて嬉しい気もするが…

「…パンケーキ代まで出して頂きましたし、そもそも休日出勤までさせてしまいましたし…」

「そんな事は上司だから当たり前だ……いいから…貰ってもらえないならこれは捨てるしかないだろうし」

やや強引に手渡されてしまい
困惑しながらもそれを鞄に仕舞おうか思案していると…

「それ、今…付けたらどうだ?」

テーブルを挟んだ向こう側から甘く微笑んだ神上さんが
手招きをした

「付けてやろうか…」

「はい…」

ハーフアップにした髪にバレッタを止めて
鏡がないから私からは見えないけれど、神上さんは嬉しそうに目を細めたから
きっと綺麗にできたのだろう

「ああ……似合ってる、可愛いな舞花は…」

「有り難うございます…って雅哉さんだけですよ?私を可愛いだなんて……目が悪いんですか?」

誤魔化すように茶化したらテーブルの下の手をぐっと握られて

こちらを真っ直ぐにみた

「裸眼で2.0だが…これは悪いのだろうか?」

そして唇が片側だけ綺麗に引き上がっていた

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