口づけは秘蜜の味
二人でお店を後にすると
既にショップエリアは暗くなっていて外はライトアップされていた

神上さんは私の手を掴むように握りどんどん進んでいく

「少し走ろう」

そんな風に言われて車まで連れてこられ…乗せられて
フワフワした気持ちのまま車が走り出す

(どこへ…行くの?)

途中、寒くないか?とか喉乾かないか?とか
何だか話しかけられたような気がするけど…上の空


やがて着いたのは街から外れた少し小高い丘で
街並みが一望できる

ベンチも置いてあるが人影はなかった

(丘…?)

街を見おろせる丘で…

(こうして見ると街もきれいなんだなぁ)

なんて関係ないことを考えていると神上さんが後ろにピタリとくっついて…私の肩を抱いた

「綺麗だよな…営業の頃たまにここで見てサボ…いや、休憩していたんだ…」

(神上さんでもサボりなんて…するんだ…)

「そうなんですね」

ほのかな月明かりが神上さんの美しい目に映りキラキラしている
何かを考えて遠くを見つめているようだ

婚約者の事を考えているのだろうか…

触れられた肩が熱い…こうしてすぐに触れ合える距離なのに…心の距離は遠い
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