口づけは秘蜜の味
「大事なのは…一緒に色んなモノ見て感じる事…だったよな?…舞花…」

そう言うと神上さんが私の…身体に手を回して、後ろから抱きつくように体を包んだ

「手が冷えるな……こうすれば温まるか?」

甘い少し掠れた声に私の胸が早鐘を打った

「はい…温かいです」

「そろそろ帰るか…」

こんな所で帰るかだなんて……聞かないで欲しい

神上さんの鼓動が耳に届いた

「あの……」

振り向いて見上げれば

哀しそうな顔の神上さんがいて
思わず……気がついたらその背中に手を回していた

「舞花?」

婚約者がいようが構わない…こんなに寂しそうな顔させたまま帰るなんてイヤだ

嘘でもいい、都合のイイ女でもいいから騙されたい

「帰りたくありません」

「え…」

呆然と私を抱きつかせたまま困惑する神上さんは

…それでもしっかり受け止めてくれ

私の背中に手を回した…

吐息が私の髪をフワリと上げた

「そんな事言うなんて…本当に帰さなくてもいいのか?意味が分かっている……んだよな?」

囁きながら回された腕にそっと頭を乗せる神上さんの香りが鼻腔を抜ける

「はい…わかってます…そうしてください…」

そのまま神上さんの手が私を上向かせ

「本当に……可愛いな…舞花は…」

「ん……」

彼の唇が私の唇を食んで……何度も食んで……

好きだ…なんて

嘯いた
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