口づけは秘蜜の味
ショップに入ってきた時の印象を今でも鮮明に覚えている……

(な、な、なんて綺麗な人!)

イケメンと呼ばれる人はこの世に幾人もいると思う

だけど、「綺麗」と形容するしか無い容姿の男性ってそんなに居ないと思う

神上さんはその少数派、まさしく「綺麗」なのだ

シャープな顎のライン、高く通った鼻筋、上唇は薄めだが口角が自然に上がっていて上品

何より目が印象的…
ややつり気味の大きめで黒く艷やかな瞳が
長い睫毛に縁取られ、星でもまぶしてあるようにキラキラして見える

そこに意志の強そうな真っ直ぐな眉

まるで人形のように滑らかな肌、そして整いすぎた顔はどこか血の通っていないような
ミステリアスな雰囲気…

『綺麗』としか形容出来ない

そんな神上さんにドキドキしながら接客していると
難題を出された

「これを50個欲しい」

それは国内で作られて居ないシルバーの製品で
鳥籠型をしたアクセサリートレー
これは人気のため在庫はそんなに無かった筈…

「お客様、大変申し訳ございません…
こちら只今在庫があまりないと記憶しております……
確認してまいりますが、いつまでにご入用か先にお聞かせ願えますか?」

「それで、用意出来るのか?出来ないのか?」

「確認してみないと、ハッキリとはお答えできませんが…50個という数は即日では難しい商品かとは思います」

あまりここで食い下がられても困る…

「そうか…では今すぐに同等のもので30個揃えられる商品はあるか?」 

「それはお値段でしょうか?用途でしょうか、大きさ…どちらの同等でしょうか?」

私がそう答えると神上さんは唇を片側だけ引き上げた

「同じような…シルバーの製品の小物だ」

そういう括りなら
日本でも製作していて取り寄せも出来るし
先日入荷したばかりの商品がいくつかあり

それぞれ20ずつ入っていたから……

「それでしたら…心当たりがあります!
少々おまちください」

確かあったはず、と倉庫に行き見てみると

やはり形は違うがアクセサリートレーと
アクセサリーケースがそれぞれ20個ずつ入荷したばかりで
特に予約も入っていなかった

そちらに保留とメモを貼ってすぐ戻り説明する

「お待たせ致しましたこちらのシンプルなトレータイプ、またはこちらのような動物の形のアクセサリーケースを合わせてでしたら…お値段も大きさも殆ど変わらずすぐご用意出来ます」

すると神上さんは小さく頷いた

「わかりました…ではそれで30揃えてくれ」

「はい!」
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