永遠の恋を君に
コンコン…

扉が開いて誉が声をかけた。

「夕食の準備出来たよ。」

「ありがとう!今行く!」

本当は直樹の顔を見るのが気まずかったけど、一緒に食べたいと言い出したのは自分だったので、1人で食べるとは言えなかった。

3人で囲むテーブル。いつもの事だか、青クラスの執事とあって、食べる時も物音ひとつ立たない。言葉数の少ない今日の夕食は、とても静かで気まずかった。

「誉さん、ごちそうさま。今日も相変わらず美味しかった。」

「ありがとう。このままだったらラウンジのコック達の役目はなさそうだな。」

この屋敷お抱えのコック達。もちろん一流レストランからの引き抜き。
普通はラウンジで食事をして、たまに執事が作った料理を食べる。
だけど、この2人が来てからは、1度も利用してなかった。

「近いうちに顔だしておかないと、契約切られちゃうかもね。」

「じゃあたまには、そっちにお願いするか。」

誉の提案で契約を切られない程度にラウンジで夕食をとることになった。

「じゃあ私、宿題をしてくるわ。」

「おぉ!頑張れよ~」

ヒラヒラと手を振る誉に返事をして、チラッと隣に座っていた直樹を見た。
直樹はこちらを見ずに、おもむろに席を立ってどこかへ歩いていってしまった。

自分の部屋に戻って、宿題を机に広げる。シャーペンを手に取るが、その手は全く進まなかった。

(直樹さんに謝らなきゃ…)

そう思った矢先だった。

コンコン…

部屋がノックされて扉が開く。誉だと思って振り返ると、そこには直樹がいた。

「…っ。」

どうしていいのか分からずに、机の方に向き直り、シャーペンを持った。

「ローズティーです。」

カップに注がれたローズティーを机のはしに置いて、踵を返して行く直樹の背中に慌てて声をかけた。

「待って…!」

直樹は足を止めて、でも、振り返らずにそのまま沙夜香が話すのを待った。

「さっきはプライベートな事聞いてごめんなさい。」

少し顔をこちらに向けて、また元に戻した。

「こちらこそ、お答えせず申し訳ありませんでした。」

では…。と直樹が歩き出すと、沙夜香は追いかけて、その背中に抱きついた。

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