永遠の恋を君に
「さやちゃん、1輪の白い薔薇の花には特別な意味があるんだ。」

俺はベットに座っていた彼女にそう笑いかけた。

「はなことば…?」

「あなたしか、いない。」

んー?と彼女は首を捻っていた。

「ちょっと難しかったかな?」

俺は笑いながら彼女に目線を合わせた。

「大好きだよ。さやちゃん。」

「さやも!さやも大好き!」

「早く良くなってね。大きくなったら結婚しようね。」

「うん!良くなる!」

よしっ、と頭を撫でてふと顔をあげると俺の父さんも母さんも。彼女の父親も、看護師さんも、みんな笑ってた。

少し俺は照れくさかった。

それから月日は流れて、俺が退院する日になった。彼女は少し寂しそうな顔をして、でも笑って俺に挨拶をした。

「なおきさん、退院おめでとうございます。」

堅苦しい挨拶を少し投げやりに言ってから、彼女は俺の耳元で囁いた。

「なおきお兄ちゃん、これあげる。」

彼女が差し出したのは小さな薔薇の付いたペンダントだった。

「お勉強の先生に、はなことばのこと、おしえてもらったの。あたし、すっごくうれしかったから、お返事しなくちゃと思って頑張って作ったの。」

少し不格好なそのペンダントをポケットにしまって、彼女に手を振った。

「ありがとう。ずっと大切にするね。」

彼女は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、またね。さやちゃん。」

「さようなら、なおきさん。」

彼女が俺の名前を呼んだのはこれが最後だった。
< 28 / 53 >

この作品をシェア

pagetop