永遠の恋を君に
「さてと!」

パパがいなくなり広くなった屋敷を見回してから、後ろにいた2人を振り返った。

何度見てもかっこいい。これからこの2人と生活出来ると考えると、心が弾んだ。

リビングのソファに座って、2人に話しかけた。

「自己紹介がまだだったわ!私は時枝沙夜香。今日で16歳になったの。この辺は知ってるか…」

独り言のように呟いてから、誉が笑いだした。

「沙夜香ちゃんって、面白い子だね。」

執事とは思えない言葉遣いに目を見開いていると、直樹が誉の頭を叩いた。

「その呼び方だけでも控えろと、何度も忠告しただろ。」

くるっとこちらに向き直って、深々と頭を下げた。

「申し訳ございません。こいつ、執事としての礼儀が全くなってなくておらず…」

まだ笑い続けている誉とは裏腹に、必死に謝る直樹が可笑しくて、少し笑いながら答えた。

「気にしなくていいんですよ。むしろ、誉さんみたいな方がいてくれたら気が楽になるから。直樹さんも、もっと楽にしてください。」

「いいね!誉さんって呼んでくれるんだ。ね、直樹もよかったね。直樹さんだって。」

誉が振り返った時、直樹は少し目を見開いてから口元を手で覆った。

(笑ってる…?)

少し新鮮な表情に魅入っていると、誉が沙夜香の目の前で手を振った。

「普通、お嬢様って俺らの事を苗字で呼び捨てだけど、沙夜香ちゃんは下の名前で呼んでくれたからちょっと嬉しくて。多分それで直樹が妄想を膨らませてる。」

「おい!誉!」

直樹は怒鳴りかけて、咳払いをした。

「2人とも仲がいいんですね。羨ましいです。」

2人のやりとりを見ていた沙夜香がぼそっと呟いた。

「私にはあんまり仲のいい友達がいないの。学校には1人くらいいるけれど、みんな私が時枝の娘だから仲良くしてくれるだけで…」

沙夜香が目をあげると、2人が話に聞き入っていた。3人の間に流れる重い空気。

「すみません!こんな暗い話をして!えっと、2人の詳しい自己紹介を聞きたいです!関係とか!」

その場を取り繕うように出した大きな声は、少し震えながら部屋に響いた。
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