十人十色恋模様
「私帰る」


そう言って俺たちに背を向ける。


そして振り返ることをせず、歩き出す彼女の手を思わず掴もうとした。


『待って』と。


『行かないで』と。


止めようとした。


でも俺は彼女の手を握らなかった。


別に好きでもない相手の手を掴む理由がない。


一瞬、彼女の頬にキラキラと輝く何かが見えた気がしたが俺は何もすることは出来なかった。
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