十人十色恋模様
すごく申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


俺が気になっている人がいると三条に話したばかりにこんなことになってしまった。


待つの大変だったよな。


「そ、そうなんですね。三条くん戻ってこないんですね」


「あの」


何を思ったのか俺は彼女を呼び止めようとしていた。


呼び止めたって仕方ないのに。


今知り合ったただの顔見知りが何をするんだ。


「それなら私がここにいても仕方ないですね」


だが、彼女はすぐにでも帰りたいというように。


「じゃあ、わ、私帰りますね?」


「あ……うん」


そう言って丁寧におじきをして、そそくさと玄関から出ていった。


初めての会話だったというのに俺は謝ることくらいしかできなかった。
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