なみだくんの日々
「あのね~実は」
「ダメダメダメ~~~」
理由を話そうとした、あたしに
佐川くんは耳をふさいで、そう叫んだ。
「なんで、聞いてくれないの?」
「だから、泣いちゃうから」
「佐川くんが?」
「うん」
こくりと頷いてわらった。

♪なみだくん
 さよなら
 さよなら
 なみだくん
 また逢う日まで♪

優しい歌声。
佐川君、とても歌がうまいようだ。

合唱コンクールで中一のときクラスで
歌った歌だった。
横には、しゅんがいた。

「え~ん」
「なんで、なんで、泣いちゃうの」
「思い出しちゃって」
「何を?ああ、聞かないんだった。
 あんまり泣いたら、料理の味
 わかんなくなるだろ。だからごめん
 休憩時間には泣かない方がいいみたい」
佐川くんは涙目+早口でそう言うと
にっこり笑った。

「うん。ごめん。そういうことか」
「だったら、仕事終わったら大丈夫だから
 明日、定休日だし会えない?
 学校、何時に終わるの?」
「15時半くらいかな?」
「西校だよね?迎えいくよ」
「え?」
そう言うと、佐川くんは部屋から出ていって
しまった。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop