なみだくんの日々
「くせなんだ」
佐川くんの瞳はキラキラだ。

涙のしずくが、
今にも
こぼれそうでこぼれない。

佐川ほし
16才
高校に行かずシェフ修行中。
高校に言っていたら一緒の高二。


「もらい泣き」

プロフィールに書いてもいいくらい
もらい泣きをするそうだ。

「笑っちゃう」

「だろう。
  ほんと、男なのに
   かっちょわるいっしょ」

「嘘~
 何か悪いことした?って思ったもん。さっき」

「よかった、笑ってくれて。
    泣いてよかったよ、俺」

「なによ、それ。
  佐川くんって、おかしな人だね」

「山本さんだって、
  泣いてるのに泣いてないなんて
  おかしな人だね。
   あっ、でも、せっかく笑ってるので
  理由は言わなくていいよ」

「ええ~。聞いてくれないんだ」

「だって、また、泣いちゃうもん」

「泣かないよ、もう」

「違うよ。
  俺の方だよ。
     泣いちゃうのは」

「男の子でも泣いちゃうんだね」

「たまんないでしょ。男の涙」

「バカじゃないの~。はは」

「これ、飲む?」


佐川くんは、そう言うと、まだサラのペットボトルの水を
先に、あたしに飲ませてくれた。

「ありがとう」

休憩時間も終わるころだったので
そのまま立ちあがり部屋を出たとき


後ろからこんな声がした。

「間接キッス、いただきます」
佐川くんは
女の子扱いしてくれた
二人目の男の子だ。

ドアを閉めながら、あたしの顔は赤くなった。
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