【完】雨恋〜雨上がりの空に恋をする〜
一目惚れなんて、それこそおとぎ話だと思っていた。
そんな都合のいい話なんて存在しないと思っていたし。
相手の事、何にも知らない癖に好きになるなんて。
そんなの変だって思ってた。
でも実際体験すると分かる。
そんなんじゃないの。
知るとか知らないとか、それ以前の。
もっと、奥深い所。
脊髄が痺れる感じ。
彼の姿を見た時、思ったの。
ああ、私はこの人が好きなんだって。
この人に出会うために今ここにいるんだって。
バカみたいだけど。
そう思えたの。
それくらい、衝撃的だった。
外の雨の音も聞こえなくなるくらい。
彼の声に耳を傾けていた。
6月の梅雨の時期。
高校1年のその季節、私は恋をした。
教育実習生の八津波恋先生。
やつは、れん。
れん、先生。
恋……。
「では、今から現国の授業を始めます。
教科書36ページを開いてください……」
教育実習初日の日から、八津波先生の授業があって。
彼の少し高めの声を長く聞いていられることに胸が高鳴った。
現国の時間とか、正直眠すぎて全然内容入ってこなかったけど。
八津波先生のならいくらでも聞ける。