【完】雨恋〜雨上がりの空に恋をする〜
そこに。先生はいた。
「先生!」
呼びかければ先生は振りむいて。
雨さん、と笑ってこちらを見る。
「……外、雨ですね。」
「雨男、発揮してしまいました。」
ざあざあ、しとしと、ぴちゃり。
雨の音が心臓の音と混ざりあって鼓膜を震わせる。
雨の匂いは先生の匂い。
雨の音は先生の音。
雨の景色は、先生を連想させる。
そしてこれから訪れる夏の緑と暑さは。
私の先生への、鮮烈な想い。気持ち。全て。
「あ、ハンカチありがとうございました。」
少し慌てて、先生がスーツの内ポケットからあの時のハンカチを取り出す。
綺麗にアイロンがけされたハンカチは、先生のよう。
「洗濯までしてくださってありがとうございます。」
「こちらこそ、返すのが遅くなってすみません。タイミングが合わなくて……。」
手渡されたハンカチからは、先生の家の柔軟剤の匂いがする。
先生の匂い……、ドキドキする。
胸がきゅっと締め付けられる。
受け取ったハンカチを少し握り締め、ポケットにしまいこむ。
深呼吸をひとつ。