【完】雨恋〜雨上がりの空に恋をする〜
「先生、これ。」
「これって、お守りですか?」
「合格祈願、作りました……。」
「え、手作りですか!?……器用ですね、雨さん。」
その嬉しそうな顔に心が満たされていく。
そして先生は、嬉しそうに微笑む。
笑った。
先生、笑った。
どきどき、心臓の心拍数が増えていく。
また深呼吸、今度は2回。
「せんせ……」
私から貰ったお守りをぎゅっと握りしめ。
先生はその手を胸に持っていき、目を閉じていた。
声をかけられない。
雰囲気が、違う。
しばらくして目を開いた先生は、そのまま窓の外に視線を向けた。
あ、顔、見れた。
あの時見えなかった横顔は、今は見える。
あの時笑っていたと思っていた顔は。
違った。笑ってなんかなかった。
真っ直ぐ、真剣な表情で。
上を向いていた。
前じゃない、上を向いていた。
ずっとずっと先生は、上を向いていた。