【完】雨恋〜雨上がりの空に恋をする〜

あの時みたいな三日月目の笑い顔。
目の下の泣きぼくろ。
短い髪に、洗練された空気感。
そして、雨男。


私の知っている先生が、目の前に立っていた。


雨はまだ上がらない。
でも、必ず上げる。
今日が、そのスタート地点。


もうあの時の私じゃありません。
うんっと大人っぽくなった私を見てください。


あの時、先生の柔軟剤の匂いがしたハンカチ。
今日持ってきています。
もう匂いはしないけど、あれから一回も使わずそのままにしてあります。
受験の時、お守り代わりにしました。


もちろん、お揃いのお守りも。
今日カバンにつけてきています。


先生のカバンを見てみれば。
私があげたお守りが、少しよれよれになったお守りがついていた。
ああもう、本当に先生は……。


「今日から白峰高校で国語の担当することになります。小竹雨です、よろしくお願いします。」


先生も私の事を忘れていないって信じています。
そのお守りがその証です。
お守りがよれるまでの年月が経ちました。
本番はこれからです。


目を見開いて驚く先生に、無邪気に笑う私。
雨は上がって。
先生との雨上がりの恋は、今、始まる。



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