【完】雨恋〜雨上がりの空に恋をする〜
「分かってますよ。良い名前ですね。」
「私も気に入ってるんです。」
「雨って、呼んでもいいですか。」
「えっ……。」
「雨、好きなんです。」
この人、わざと言ってるの……?
その言葉、勘違いしちゃうよ……?
あっさりと、悪びれもなさそうに。
雨が好きだと言う先生。
私の名前も、雨。
その言葉は、禁句です。先生。
「雨って、呼んでも、いいですよ。」
「ありがとう、雨さん。」
変わらず爽やかな笑顔を浮かべる先生。
その笑顔に私が惚れている事も知らずに。
また、無自覚に私を好きにならせる。
離さない、その笑顔。
私を惹きつけてやまないその笑顔。
ねえ先生。
恋って、呼んでもいいですか?
聞けなかった。
もし聞いてしまったら、自分の気持ちをバラしてしまいそうになるから。
気付かれると思ったから。
生まれたばかりのこの感情を、まだ否定されたくない。