【完】雨恋〜雨上がりの空に恋をする〜
せめて、教育実習が終わるその日までは。
まだ内緒にしていたい。
終わるその日には、伝えられるよう。
大事に大事に育てるから。
先生に、女の子って意識してもらえるように。
今はまだ生徒だもん。
雨、って呼びづらくなるその日まで私はあきらめない。
だからその時は、恋って呼んでもいいですか、先生?
それからの1週間は、先生と話したり話さなかったり。
それでも、みんなが名字で呼ばれている中。
私だけ下の名前、雨って呼ばれることに優越感を抱かずにはいられなかった。
好きな人の特別。
これは、その他大勢じゃないよね?
私だけの特別。特等席。
大事にするよ、だから誰の下の名前も呼ばないで。
梅雨の時期で、外はまだまだ雨の季節。
雨音をBGMに先生の声に耳を傾ける。
ざあざあ、雨の音。
つんっと鼻にくる雨独特の匂い。
曇り空、曇天模様。
灰色の空が一面に広がっている。
不鮮明な所が、少し先生に似ている。
爽やかな所もあるけどミステリアスな所。
私がまだ先生の事をなにも知らないのを表しているみたい。
まるで、先生と私の関係値。
この空が晴れる頃には、私。
先生の本当の特別になれるかな……?
外はまだまだ雨が降っていて。
止む気配は一向に訪れなかった。