鬼女と呼ばれた女王。
「泡鈴。分かって頂戴。この国を守るためなの。私は、この14年間とっても幸せだったのよ。泣かないで。」

舜英が先程と打って変わって穏やかな声で泡鈴をなだめる。 

泡鈴はこれが、王族。国の為にと命すら惜しまない、王族として正しい行動をとる舜英を誇りに感じたが同時に、愚かさも感じた。

「………、私も殺してください。」

泡鈴はボソッと消え入りそうな声で言った。
そして、誰の返事も聞かず直ぐに続けた。

「私は、潤蘭様にお仕えしていました。主に従い灯国に入りました。10歳の時、潤蘭様に舜英様に仕えるよう言われ、嫌々仕方なくお世話をしておりました。生涯、主はただ一人潤蘭様であると思って。しかし、共に過ごす中で舜英様を守りたい、そう思うようになり潤蘭様が亡くなられたとき、私の主は舜英様だと心に決めました。」 

ひと呼吸おいて王と舜英の顔を見ながら泡鈴は、続けた。

「舜英様がここで死を選べば私は二人も主を失う事になります。生涯、お仕えする主は一人と思いながら、お二人にお仕えしました。三人目はいりません。主も故国も失った今、思い残すことは何一つありません。どうか、私を共に殺してくださいませ。」

泡鈴は王の目を真っ直ぐ見つめ、頭を下げた。

「…と、言っておるがいかがする舜英。」
 
王は舜英に意見を求めた。

「舜英様には先程お暇を頂きました。私の行動を制限する事はできません。」

舜英の答えを待たずに泡鈴は言った。
舜英は、何も言わずに泡鈴を見ていた。

「分かった。そなたの最後の望みを叶えてやろう。舜英、そなたの処刑時間は追って連絡する。今しばらく待機せよ。」

王は、冷たく言い放って奥に姿をけした。
 


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