あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
マンションのベランダから




「じゃあな!翔琉!七時からの塾忘れんなよ〜」


「分かってるわ!じゃあな〜」


蝉の鳴き声もそろそろ聞こえなくなってきた二〇一八年九月の半ば。

自転車に乗って坂道を下る。

なんとも気分の悪い生温い風が俺の体を駆け巡る。

いつものように見えてきた、坂の終わりの小さな駅。


その小さな駅のロータリーには、同じく小さな自転車屋と、一階が玄関と駐車場のみという小さなマンションが、周辺の脇にこぢんまりと建っていた。


ここは大阪と言えど、中心部から遠く離れた地域のため、駅近の割には人で溢れかえっている様子はない。
といっても、田舎のように田畑だらけというわけでもないが。


俺はこのマンションの横にある線路沿いの細い道を通り、真っ直ぐな道をただひたすら進んだ先に住んでいる。
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