あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
***
午後七時前。
今日は遅刻せずに塾に着いた。
「あ!翔琉〜!今日は遅刻せえへんかったんか〜。チッ、なんやぁ、せっかく一緒に遅くまで残ってあげよと思ったのに〜」
「あ…水田先生」
「今日は十一時コースじゃなくて残念!」
「いや、あの、今日俺、十一時まで残ります」
「え…?」
ザワッと皆が凄い目で俺を見た。
授業前の少し騒がしい時間が一気に冷める。
「え、翔琉何かあった?」
「え…いやぁ別に…」
「ほんま翔琉、どうしたん?大丈夫か?頭おかしくなったんか…?」
席に座っていた広音が、わざわざ俺のとこに来てまで尋ねてきた。
「い、いや!やから、なんもないって!変ちゃうし!」
「ま、まぁいいけど…どうぞお勉強してくださいな…」
「あ、はい…」
広音は最後まで疑いの目を外そうとはしなかった。
気付いていないフリをして誤魔化したけど。