あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

私は一人、早く着替えを済まし、最近新しくなったであろう綺麗なトイレへと向かった。

そこで鍵をしめ、大きく息を吸った。
ゆっくりと、深く息を吐く。

さっき言われたことが深く突き刺さって抜けなかった。

あの時、今にも涙が溢れ出しそうだった。

気持ちが悪いと言われた私の脚。
馬鹿にされた大好きな街。

故郷というほど長くは住めなかった。
でも私にとっては心の故郷だった。

なにか辛くなったらこうやって深呼吸すれば良いと、理学療法士さんに教えて貰った。
その人も、昔辛いことがあった時、こうしてやってきたらしい。

さて、そろそろ出ようかなと鍵に手をかけた瞬間。

「なぁ、岸元さんどう思う?」

名指しで声が近づいてきた。
きっとクラスの女の子たちだろう。
< 103 / 240 >

この作品をシェア

pagetop