あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
私は一人、早く着替えを済まし、最近新しくなったであろう綺麗なトイレへと向かった。
そこで鍵をしめ、大きく息を吸った。
ゆっくりと、深く息を吐く。
さっき言われたことが深く突き刺さって抜けなかった。
あの時、今にも涙が溢れ出しそうだった。
気持ちが悪いと言われた私の脚。
馬鹿にされた大好きな街。
故郷というほど長くは住めなかった。
でも私にとっては心の故郷だった。
なにか辛くなったらこうやって深呼吸すれば良いと、理学療法士さんに教えて貰った。
その人も、昔辛いことがあった時、こうしてやってきたらしい。
さて、そろそろ出ようかなと鍵に手をかけた瞬間。
「なぁ、岸元さんどう思う?」
名指しで声が近づいてきた。
きっとクラスの女の子たちだろう。