あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

自分の悪口を聞くのが、これほど苦しいものとは知らなかった。

私の言ったこと、とった行為、話し方、存在価値、全て否定された。

何かしら言い訳をつけて、影でコソコソと。

福島に転校した時も、発音のことは 度々言われた。

でもそれはからかっている様子ではなく、東京から引っ越してきたことを知ってのこと。

それにカクやアズちゃんは、そんなこと一度も言ってこなかった。

どうして生き残ったか、なんて私が一番知りたい。
私が生き残った理由なんてわからない。
皆が死んでしまった理由だってわからない。
死はいつ訪れるかわからない。
なのに。
そんなこと言わないでよ。
私だって、こんなことになるなら、カクと…皆と一緒に死にたかった…!

ああ、深呼吸しなきゃ。
息が上がってきた。
手が震えてきた。
もっと静かに、息を潜めないと。
私がここにいるってバレてしまう。

視界がぼやけた。
また涙がこぼれ落ちたのだとわかった。

楽しかった思い出が脳裏に過る。
カクと、アズちゃんと、みんなと遊んだ日々を。
学校にくれば必ず「おはよう」と笑いあった日々を。

─────ガタンッ!

「え、なに」

「誰かおったん!」

「ちょ、行こ。そろそろ四時間目始まんで!」

バタバタと複数の上履きがトイレから出ていく音が聞こえた。
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