あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

光が射さないこの部屋は、まるで私の心の中のようだった。

力強く膝を抱えた。
このまま胸が圧迫されて死んでしまえばいい。
それほどに強く引き締めた。

どうして過ぎていったあの日は、こんなにも私を苦しめるのか。
あれから一年経った。
辛い気持ちが消えることは無い。
でも、以前よりも前をむいた。
辛かったリハビリも頑張った。

これ以上何を頑張れというの?
頑張った結果がこれだったのよ。

ごめんと言われて、私は安堵した。
その言葉を信じたから。
信用したから、それを裏切られて辛かった!
だったら、私はもう二度と他人を信用なんてしない。

これ以上辛いことばかりなんて、耐えられない。

もう学校に行きたくない。
もう…生きていることが耐えられない。

すると扉が開き、オレンジ色のギンガムチェックのエプロンをつけた祖母が、ご飯をのせたお盆を持って顔を出した。

「光希歩ちゃん、ご飯よ」

いつの間にか、そんな時間になっていた。
ほら、まただ。
また私の想いを置いてきぼりにして、勝手に時間は進んでいく。

「…いらない」

お母さんの歌にあった。

ほら
夢をみて
かわいい赤ちゃん
大丈夫
明日が来るわ
おやすみなさい

…大丈夫?
明日が来る?
嫌だ。
明日なんか来ないで。
時間よ、進まないで。
大好きな思い出を、これ以上消さないで。
私だけ、みんなを置いて大人になんかなりたくない。

「光希歩ちゃ…」

死なせて。

「いらない…いらないの!私はこの世界に必要ないのぉ!もう生きたくない…。みんながいるところへいかせて…お願い…」

海光にだって、おばあちゃんがいる。
私がいなくったって、カクがいなくったって、お母さんやお父さんがいなくったって!
事は進んでいくのよ!時間は勝手に進むのよ!
私がいなくったって…。

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