あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「…なにが?別に翔琉のせいじゃないのに」
「違う。あの時、そばに居れんくてごめん。いじめの時も、同じ学校じゃなくてごめん。義足のことも。引いたわけちゃうけど、驚いて、ごめん。あと…辛い過去、話させてごめん」
少し間を置かれた。
スンと鼻をすすり、口を開く。
「翔琉のせいじゃない。きっと、誰のせいでもない。それに…義足のことも。ずっと黙ってたから、驚くのも当然だよね…。多分、あの頃の私なら、そんなこと言えてないだろうけど」
もっと謝ることはたくさんあった。
大切な歌を、利用して光希歩に近づいたこと。
本当に欲しいものをわかってやれず、ミサンガが叶えてくれるという軽い考えでいたこと。
「こ、こんな俺からのプレゼントとか、いらんよな。ほんまごめんな」
俺はおずおずと、ベンチに置いている紙袋に手を伸ばす。
「え…。違う、違うよ。そんなことない。それに…私だって悪かったから」
「え?」
光希歩が紙袋を奪い取った。
下を向き、また寂しそうに呟く。
「私…翔琉を利用した」
俺を利用した?
いつ?どこで?
何かをされた記憶などない。
「試したの。本当の姿を知らなければ、周りの人と同じように接するだろうけど、この姿を見た途端、離れていくって。みんな結局見た目で判断するんだって。他人を信用しないことは、間違ってないって。それを証明するために、翔琉を利用したの」
「え?そんなこと?」
びっくりするような目で、光希歩が俺の方に顔を向ける。
驚いた。
利用っていうから、どんなことかと思えば。
「怒ら…ないの?」
「なんで?俺は光希歩に会いたかったし。どんな理由であれ、俺と話してくれたこと、会ってくれたこと、下りてきてくれたこと、俺にとってはめっちゃ嬉しかったで」