あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

彼女はグッと涙をこらえているように見えた。
それは間違っておらず、光希歩は両手で目を押さえる。

「…でも結局、いつの間にか翔琉のこと信用しちゃってた。やっぱり、人は人を信じてしまうんだろうね。どこかで、助けて欲しいと思って、気付かぬうちに、すがりついてしまうんだろうね」

その言葉は、強く心に突き刺さった。
ずっと、助けて欲しかったんだと言われているようで。

「…悔しかった。今でも許せない。汚染って言われた時、私の大好きな街は汚れてるんだって言われたようで」

「…うん」

「原子力発電所がなかったら、そんなこと言われなかったのかな。どうしてあそこに作ったのかな。どうして原子力発電ってものを…」

彼女は、両手で目を押さえつけたまま、膝に向かって伏せた。

「……確かに、そうやな。でも、今の日本の現状では、厳しいんやろなぁ。リスクはあっても、その日その日の人々の生活がかかってるから…」

「……わかってる。わかってるよ。一日でも電気が無ければ生活に支障が出るってことくらい。わかってるけどっ…!」

苦しいと、悔しいと、言っているのがよく伝わってきた。

「…わかってるけど、納得いかんねんよな。それは、俺たちやこれからの世の人々が、もっとより良い方法を見つけるか、この実態や過去に起こった、あの薄れかかっている事故を、しっかりと後世に伝えていくしかないんやろうな…」
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