あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

すると、ずっと伏せたままだった光希歩が立ち上がった。

「おばあちゃん、心配してるだろうから、帰るね。ミサンガ、ありがとう」

紙袋を持った、涙目の彼女が再び人工的な光に包まれる。

「…これからも、来るから」

「…え?」

口から漏れた想いの欠片は、次から次に溢れ出て、止まることを覚えない。

「毎日、毎日、ここに来る。光希歩の辛い過去が消えなくても、これから俺が、光希歩にとって幸せな日々をつくるから!ずっと支えるから!」

光希歩は、唇を噛み締めながら笑った。
それが光希歩の心からの笑顔かは、まだわからなかった。
だから、これから俺が笑顔にする。
他人は信用できないなんて、言えないようにしてやる。

俺は、籠になにも乗っていない自転車に跨り、三月の風を切った。

< 115 / 240 >

この作品をシェア

pagetop