あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
そう言われて、言葉がでなかった。
病人にまで気を遣わせている情けない孫。
中学にも高校にも行かず、ましてや外にもでない私。
翔琉に下りてきてと頼まれた日は、人のいない夜だったからよかった。
でも…。
「じゃあ、寝るからね。おやすみ」
そそくさと布団に潜る祖母。
「お粥…一応置いとくから」
私はそう言って、部屋を出た。
それと同時に「行ってきます!」という声が目の前を通る。
「行ってらっしゃい!気をつけてね!」
手を振るその子の背中には、私の時代とは少し違う、たくさんの可愛らしい柄が入った桃色のランドセルがあった。