あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

味噌汁の味噌をとき終わり、味見をする。
いつもの少し濃い味付けに、食欲をそそらせる出汁の香り。
おばあちゃんから受け継いだ味を、今日も完璧に作れたと思った時。

「お姉ちゃん。おばあちゃん起きひん」

「え?ちゃんと起こした?」

体調が悪くても、必ずと言っていいほどすんなり起きるおばあちゃんが、今日は起きないなんて、おかしい。

「起こしたで!何回揺すっても、声かけても起きひんねん!」

余程体調が悪いのか、それとも、別の意味で…。

「見に行くわ」

火を消して、海光と共に部屋へ向かった。
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