あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
扉を開け、祖母のもとへ駆け寄った。
「おばあちゃん、大丈夫?そんなに具合悪いの?」
体を揺すってみても、なんの返事もない。
掛け布団を下の方へ退け、恐る恐る首元に手を当てた。
「お姉ちゃん…。おばあちゃん、大丈夫なん?大丈夫やんな?」
海光が不安そうな声を上げた。
大丈夫、と言ってやりたかった。
でも、私の手に伝わってくるのは、現実を受け入れまいと焦り震える自分の手のみだった。
「いや…だめ…おばあちゃん、死んじゃだめ!!」
その言葉が何を意味するか、人一倍感の鋭い海光はすぐに察した。
「お姉ちゃん!救急車…救急車呼ぶで!そんで病院行こ!」
海光はすぐに次のステップへと移った。
電話を手に取り、即座にかけた。
私はまだ祖母から離れることはできなかった。
どうしたらいいかわからなかった。
おばあちゃんと、届いてないという現実を否定するように何度も叫んだ。
あまりにも急すぎる。
昨日、体調が悪かった時に病院に行けば良かったの?
海光に任せて病院に連れて行ってもらったら、おばあちゃんはまだ生きていたの?
また私は自分の血色のない銀色の右脚を眺めた。
ただ、以前と違うのは、そこに黄色、オレンジ、白で編まれた真新しいミサンガがついている。