あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「なんやー翔琉、また恋愛関係かー。翔琉も大変やなぁ」
「勝手に表情で読み取んなよ!」
照れ隠しか、と言わんばかりに、うんうんと頷く広音。
「で、最近どうなんや。なんか進展あった?」
「あるわけないわ。そもそも会えてへんし」
「えー!学校は?知らんの?家は?」
「知らん!家は知ってるけど…」
「もっと情報集めろよー!家知ってるんやったら乗り込め!ピンポンダッシュでもして気引いたら?」
「アホか。それじゃあ気を引くじゃなくて、身を引かれるだろ」
目の前の綺麗な茶色の地毛がふわふわと揺れ、腹を抱えて笑っている。
「ちなみにその子、どこ住んでんの?」
「え…」
「大丈夫やってー!翔琉の好きな人取ろうなんて思ってへんし!」
いや、そういう問題じゃないんですけど。
「疑い深いなあ。ちょっとでも翔琉の力になりたいなーって思ってんのに」
顔に出ていたのか、広音はまたも俺の表情から読み取ったようだ。
「……あそこのロータリーのマンションのとこに住んでる」
なんだか、俺だけが知っていた秘密の場所を打ち明けたような気分になった。
「ロータリー?あ、あそこ多分、俺の中学の校区内やで」
「マジで!?」
俺は、久々の有力情報に食らいついた。